心臓病に対するロボット手術とは
一般的な心臓手術は“胸骨正中切開”と呼ばれ、胸の中央の皮膚を20〜25cmほど切開し、胸骨を切り開いて行います。しかし、近年は医学が進歩したことにより、小さな傷かつ胸骨を切らずに
今回はその中でも、手術用ロボット“ダヴィンチ”を使った心臓手術についてご紹介します。
手術用ロボット“ダヴィンチ”を用いたロボット心臓手術とは?
“ダヴィンチ”とは、3本のロボットアームと3D内視鏡が搭載された手術用ロボットです。患者さんの片胸に開けた小さな穴からロボットアームや内視鏡カメラを挿入し、肋骨の隙間から治療を行います。
特徴的なのは術者が患者さんの側を離れ、コンソールに座って遠隔操作で手術を行うことです。カメラで映した体の内部の映像をモニターで見ながら、ロボットアームを操作して患部の切除・縫合などを行います。
心臓領域におけるロボット手術のメリット
ロボット心臓手術の大きなメリットは、傷が小さく手術中の出血が少ないために、従来の心臓手術よりも早期に回復・退院が期待できることです。また、1つの穴のサイズは1~2cmといわれており、術後の傷が目立ちにくいといえます。
ロボット心臓手術は術者にもメリットがあります。ロボットアームは通常の治療器具よりも自由に動かしやすく、手ブレ補正機能も付いているため、従来の手術方法よりも細かい動きが行いやすいといわれています。
また、3D内視鏡カメラで見ながら手術を行うため、立体的に内部を観察しながら治療できることも特徴です。肉眼と違ってズームして細かい部分を見たり、術者以外の医師や看護師も手術の内容を観察できたりするなど、手術が行いやすい側面があります。
心臓領域におけるロボット手術のデメリット
ロボット心臓手術は通常の手術治療と比較すると、手術時間が長くかかりやすい傾向があります。そのため心臓の動きを止める必要のある手術の場合は、心臓を止めておける時間に限りがあるため、ほかの手術方法が検討されることがあります。
また、通常の手術と比較すると触覚から得られる情報がないため、画像の情報だけを頼りに手術を行うことになります。この点から、ロボット心臓手術の術者には、高い技術と経験が必要であるといわれています。
ロボット心臓手術の適応とは?
2024年1月現在、ロボット心臓手術の適応となる心臓手術としては、心臓弁膜症で検討される“僧帽弁形成術”と“
ただし、適応となる病気であっても、病気の進行度合いや患者さんの全身状態によってはほかの治療方法が検討されることがあります。
また前述のとおり、心臓に対するロボット手術は難易度が高いことで知られており、どの医療機関でも受けられるわけではありません。日本では、“ロボット心臓手術関連学会協議会”という団体が定めたトレーニングを受けた施設・医師のみが心臓のロボット手術を行えます。
ダヴィンチによる僧帽弁形成術
ダヴィンチを用いた心臓のロボット手術の1例として、ここでは僧帽弁閉鎖不全症(心臓弁膜症の1つ)に対して行われる“僧帽弁形成術”についてご紹介します。
僧帽弁形成術とは、うまく閉じなくなってしまった僧帽弁の形を整えることにより、僧帽弁の機能を回復する手術治療です。もともと胸骨正中切開や肋骨の間から内視鏡などの器具を入れて行う“MICS”でも行われてきた治療ですが、ダヴィンチを使用することによって、手術で生じる傷をより小さくできるほか、肋骨にかかる負担も小さく済むため、患者さんの体に生じる負担が軽減できるといわれています。
ロボット心臓手術とMICSの違い
MICSとは、片胸の皮膚を7~10cm程度(3D-MICS、ロボット心臓手術では3cm程度)切開し、肋骨の間から器具や内視鏡などを入れて行う手術です。従来のMICSで使用される内視鏡は2Dが一般的でしたが、近年は3D内視鏡を用いた3D-MICSを行う医療機関も増えてきています。
ロボット心臓手術とMICSの大きな違いは、ロボットアームで手術を行うか、鉗子と呼ばれる器具で手術をするかという点です。ロボットアームは鉗子と比較すると細かい動きが行いやすいといわれていますが、触覚がないため注意が必要です。どちらも3D画像で術野を観察でき、同じ3cmほどの皮膚切開で同程度の完成度の手術が可能と考えられます。
ただし手術時間を比較すると、ロボット心臓手術はMICSよりも時間がかかりやすいといわれています。そのため、それぞれのメリットとデメリットについて、よく確認することが重要です。
受診希望の方へ
前述で紹介したロボット手術のメリットがデメリットを上回ると判断するときは、ロボットでの心臓手術を積極的に行うようにしています。
まずはお気軽に以下よりメールでご相談ください。