TAVIとは ~大動脈弁狭窄症の治療方法について~
心臓の中にある弁の1つ“大動脈弁”がうまく開かなくなり、血流が滞ってしまう病気を“
大動脈弁狭窄症にはさまざまな治療方法がありますが、その中の1つに“経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)”が挙げられます。このページでは、TAVIの特徴や適応などについて詳しくご紹介します。
大動脈弁狭窄症とは?
大動脈弁狭窄症は、心臓の弁“大動脈弁”の開きが悪くなることにより、血流が滞る病気です。初期段階には自覚症状がないことが一般的ですが、進行すると体を動かした際の胸の痛みや息苦しさ、突然意識を失う“失神”などの症状が現れることもあります。
心臓には4つの部屋があり、それぞれに血液の逆流を防ぐための“弁”がついています。このうち、大動脈弁は左心室と大動脈の間にある弁です。心臓の左側は全身に血液を送り出す役割を持つため、大動脈弁や僧帽弁など左側にある弁には特に負荷がかかりやすく心臓弁膜症が生じやすいといわれています。
大動脈弁狭窄症は、軽症であれば経過観察や薬物療法が検討されることがあります。しかし、一度壊れた弁は自然に元に戻ることがないため、進行した場合にはカテーテル治療や手術治療などが検討されることが一般的です。
大動脈弁狭窄症のカテーテル治療“TAVI”とは?
カテーテル治療とは、血管に“カテーテル”と呼ばれる細い管を通して行う治療方法です。大動脈弁狭窄症の場合、“経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)”が検討されます。
TAVIとは、カテーテルを大動脈弁の位置まで進め、壊れた弁の代わりに人工弁を留置する治療方法です。カテーテルを挿入する血管の位置によっていくつかのアプローチ方法があり、多くは“経大腿アプローチ”といって太股の付け根の血管からカテーテルを挿入することが一般的です。
TAVIで用いられる人工弁の特徴
TAVIで用いられる人工弁は“生体弁”といって、ウシやブタの心膜から作られた弁です。
人工弁は小さくなった状態でカテーテルの先端に取り付けられており、留置される場所まで進めた後、カテーテルの先端についたバルーンで膨らませるタイプと、人工弁そのものが拡張して弁となるタイプがあります。それぞれの弁の状態によって適したタイプが異なるため、患者さん一人ひとりに対して使用する生体弁を慎重に検討することが大切です。
また、留置された生体弁は心臓にとって異物となるため血栓がつくことがあります。これを防ぐために、治療後一定期間は抗血小板薬の服用が必要となります。
TAVIのメリット
TAVIのメリットは手術治療と比較して、体への負担がかかりにくいことです。そのため、高齢の患者さんや基礎疾患のある患者さんなど、体力的な問題などで手術治療が難しい患者さんにも治療を行える可能性があります。
また、入院期間も手術治療と比較すると短くなる傾向にあり、術前の入院を含めて1週間程度になることが一般的です。
TAVIのデメリット
TAVIのデメリットとしては、仮にカテーテル治療でうまく人工弁が留置できなかった場合や重篤な合併症が生じた場合などに、手術治療が必要となることが挙げられます。治療を受ける前に、治療で起こりうる合併症や注意点なども医師から説明してもらうようにしましょう。
また、TAVIは日本では2013年に保険適用となった比較的新しい治療で、これまで長期の治療成績が分からない側面がありました。しかし、近年少なくとも術後5年は生体弁が耐久することが確認されています。
TAVIの適応
TAVIは症状がある重症な大動脈弁狭窄症の患者さんの中で、特に高齢で体力が低下している方や、ほかに基礎疾患があり手術治療が困難な方などに検討されます。具体的な年齢としては80歳以上の方がTAVIを検討され、75歳未満の方は通常手術治療が第一選択となることが一般的です。
また、過去に大動脈弁狭窄症で生体弁を使った治療を受けている方で、留置された生体弁が劣化し、うまく機能しなくなった場合にもTAVIが検討されることがあります。
透析患者へのTAVIも可能に
TAVIでは、開胸手術の行えないさまざまな患者さんに対して大動脈弁狭窄症の治療が行えますが、これまで透析患者さんに対するTAVIは適用外とされてきました。しかし、2021年より透析患者さんに対するTAVIも保険診療として行えるようになりました。
TAVIの治療の流れ
TAVI治療が検討される場合、まずは適切な治療方法を検討するために検査入院が必要となることが一般的です。
検査入院では、血液検査や心電図、X線検査、超音波検査、CT検査、心臓カテーテル検査などが行われます。検査の結果、TAVIが適切な治療であると判断された場合に実施することになります。
治療の際は数日前から入院することが一般的で、治療後はリハビリテーションを行い、機能が回復した段階で退院できます。
受診希望の方へ
大動脈弁狭窄症では、病気の状態や患者さんの全身状態によってさまざまな治療方法が検討されます。
特に年齢や基礎疾患の都合で手術治療が困難な場合、TAVIが検討されます。治療方法を検討する際は医師とよく相談して、納得したうえで決めることを心がけましょう。