main-visual

心疾患と治療

CARDIAC DISEASE AND TREATMENT

冠動脈バイパス術 

冠動脈とは?
心臓の筋肉を栄養する血管で主に3本の血管で構成されております。心臓の表面を走行しており全身に灌流する血液の約5%を心臓に供給しています(図1)。
左前下行枝:主に、左心室の前側の心筋と心室中隔(右心室と左心室の間を隔てる壁)を栄養します。
左回旋枝:主に左心室の左側の側面から後面にかけての心筋を栄養します。
右冠動脈:主に左心室の下側の心筋及び右心室、心室中隔の一部を栄養します。
(図1)
冠動脈疾患とは?
主には動脈硬化が原因ですが(図2)、攣縮によるのも、塞栓症、川崎病の後遺症などそれ以外の理由で冠動脈に血流障害が生じることがあります。
心臓が正常に動くには冠動脈から心臓の酸素需要に見合う酸素が送られる必要があります。しかし動脈硬化などで冠動脈が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)すると、心臓の酸素需要に見合った酸素の供給が難しくなり結果的に心臓の収縮力が低下します。
冠動脈疾患には労作性狭心症、冠攣縮性狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞など様々なものがありますが、どの疾患も冠動脈の狭窄や閉塞が原因です。不安定狭心症の一部や急性心筋梗塞は急性冠症候群とも言われ、緊急で治療が必要となります。また、これらが原因で心不全や不整脈を合併することもあり、心筋梗塞などを発症した場合、最悪は突然死の可能性もあります。
(図2)
症状は?
冠動脈疾患の主な症状は胸痛です。狭心痛とも言われ、運動時などに左胸や心窩部に絞扼感、圧迫感を感じたり、重症の場合は安静にしていても同様の痛みを感じることがあります。狭心痛は胸から左肩あたりが締め付けられるように痛いという痛みです。また、一見心臓とは関係がないような、顎、歯、背中、左肩に至る痛みを感じる場合もあり、このような痛みを放散痛と言います。しかし3割程度の患者さんでは狭心痛などの症状がでない方がいると言われております。
リスクファクターは?
糖尿病・脂質異常症(高コレステロール血症)・高血圧・喫煙歴・家族歴などを有する患者さんが、虚血性心疾患を発症する可能性が高いことが知られております。
治療方針は?
①薬物療法
薬を用い動脈硬化の進行を抑えたり、狭窄した血管に血管拡張薬を投与し広げたりといった治療を行います。狭窄の程度の強くない軽症の患者さんにはまずこの治療を行います。しかし、根本的な治療にはならないため、狭窄度の進行、症状などの悪化があれば他の治療法を検討します。

②カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)
主に循環器内科で行われる治療です。風船治療やステント挿入などで狭くなった、または詰まってしまった血管を内側から広げる治療方法です。基本的には局所麻酔で行うことが可能で低侵襲です。狭窄(閉塞)した部分を拡げますが、治療した部分が再び狭窄(閉塞)する可能性があります。また、狭窄の部位や動脈硬化などの性状、解剖学的にカテーテル治療が適していない患者さんもおられます。

③外科治療(冠動脈バイパス術:CABG)(図3)
狭窄や閉塞より末梢側に新たな血流路を再建する方法です。血液の迂回路を作成するのでバイパス手術と言われいます。新しい血液の供給路として用いられる自家血管をグラフトと言い、代表的なものとしては左右内胸動脈、大伏在動脈、橈骨動脈、右胃大網動脈、大伏在静脈などを用います(図4)。この治療では性状の良い血管どうしを吻合するので、吻合部の閉塞をきたしにくい(追加治療が少ない)という利点があります。その他に将来的な心筋梗塞の発症リスクを下げれるというデーターもあります。以前は人工心肺を用い心臓を止めてバイパスを行う方法が主流でしたが、現在はより低侵襲な心拍動下手術(図5)が取り入れられております。心臓を止めずに動かしたまま手術を行うことで脳梗塞の合併率を低下させ、出血量を減少させられるの報告があります。
(図3)
(図4)
(図5)
当科の冠動脈バイパス術の特徴
日本の全国平均では毎年約50~60%の冠動脈バイパス手術が心拍動下手術で行われていると報告されておりますが、帝京大学心臓血管外科では単独冠動脈バイパス手術の約95%を心拍動下手術で行っております。
また病変部位の長いびまん性病変に対する内膜摘除術やオンレイ法なども積極的に行っております。
左前下行枝の一枝病変に対するMID-CABGにおいては手術支援ロボットDaVinchiを使用した左内胸動脈の採取を行い、左第4肋間 4.0cmの皮膚切開で行うことがあ、最近ではMICS-CABGと言われる左第4もしくは5肋間6.0~8.0cmの皮膚切開で多枝バイパスをより低侵襲に行う術式も導入しております(図6)。
(図6)

文責 浦田 雅弘

〒173-8606
  東京都板橋区加賀2-11-1
03-3964-1211(代表)

Copyright© 2022 Teikyo University. All Rights Reserved.